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「あいのり」立ち上げの経緯等について

 自治体様等から多数お問い合わせをいただいているため、専用ページを作成しました。
 立ち上げの経緯等について、詳しく知りたい方はこのページをご覧ください。

立ち上げの経緯

 本会では、地域福祉活動計画の策定を目的に平成24年11月から平成25年1月にかけ、市内在住の20歳以上男女3,000人に対するアンケート及び市内9地区において地区別懇談会(288名参加)を開催しました。この地区別懇談会において最も多くあげられた地域の課題が「高齢者の移動」に関するものでした。
 このため、第一期地域福祉活動計画(平成26年3月)において「福祉のあし事業」を新規事業として位置づけ、バス事業とデマンド事業、両方を同時並行的に検討してきました。

なぜタクシーなのか

買い物弱者の救済方法としては、大きく分けて以下のものがありますが、それぞれの方法に課題がありました。
 
【ネット注文などによる商品宅配サービス】
 高齢者から寄せられた声として多かったのが「注文方法が複雑で分からない」というものでした。社協が電話を受け、注文を代行するサービスも検討したのですが、実際に買い物に困っている方の声として「外に出たい」「手に取って商品を選びたい」というものが多くありました。
(令和3年4月11日追記)
 新型コロナウイルスの影響からあいのりのオプションサービスとしてあいのりプラスを開始しました。
 
【移動販売車などによる訪問販売サービス】
 まず難しかったのが、高額な経費をかけて車両を改造しなければならない点と販売員の人件費でした。社協で試算した結果では、とても社協で負担できる規模の経費ではありませんでした。
 また、高齢者の声として「自宅まで来てもらうと『買わないと申し訳ない』と感じる」との声がありました。
 
【店舗を設置する】
 これは実際にやってみました。平成29年8月に本会で運営する小野上地域福祉センター内に売店を作りました。生活必需品300品目をそろえ、「シルバーカーで買い物できる」など、高齢者に特化した売店となっています。
 当該施設のある小野上地区には、生活必需品を購入できる店舗がほとんどないため、地域住民のニーズと施設利用者の増加を目的に売店を設置しました。
 この売店は、本会運営施設であることから、家賃や水道光熱費の負担がないため、運営が成り立っていますが、市内に複数店舗を設置するのは経費面での課題があります。
 
【巡回バスを走らせる】
 これも実際にやってみました。平成28年10月より福祉のあし事業として、本会で運営する施設送迎バスを転用し、無料巡回バスの運行を開始しました。課題としては「転用できるバスが1台しかないため、市内の一部しか運行できない」「そもそもバス停まで行くことが困難な方がたくさんいる」という点でした。
 
 最終的に私たちがこだわったのは「高齢者が出かけられる事業」と「ドアtoドア(玄関から店舗入口まで)」でした。このニーズに応えるにはタクシーを活用するしかないという結論に至りました。

類似事業との違い

 タクシーを活用した買い物弱者の救済事業は、他の自治体でも実施しているところがあります。しかしながら、それぞれの事業に以下の課題があることを感じました。
 
【タクシー券の配布】
 高額な事業費がかかるため、事業継続性の観点から課題があると感じました。また買い物弱者救済というには配布額が少ない自治体も多数見受けられます。
 
 【利用者が自分で相乗り相手を探して申し込む事業】
 私たちが地域で買い物に困っている高齢者にお話をうかがったところ「本当に買い物に困っている人ほど誘える仲間がいない」ということを感じました。誘える仲間がいる方は、それなりにアクティブな方に限られる状況がありました。
 
【特定の集合場所に集まって、タクシーなどに乗る事業】
 たとえ数百メートルの距離でも、重い荷物を持って歩くのが困難な高齢者はたくさんいます。また雨風がしのげる集合場所というと非常に限られた数になるため、どうしても高齢者の歩く距離が伸びてしまいます。
 
 本会の「あいのり」では、利用者間の調整を社協が行うため、一人で申し込んでいただいても相乗りを成立させることができます。
 また、本会がタクシー会社と調整を行うため、完全なドアtoドア送迎も実現させることができます。

利用料と事業費について

 タクシーの運賃を「利用者(4人)」「社協」「店舗」でそれぞれ負担するため、当然、利用者の負担額は、通常タクシー料金の1/4以下になります。「店舗までの往復料金が1回500円~」という利用料設定ができるのはこのためです。
 また、事業費についても、タクシー料金から「利用者負担」と「店舗協賛金」を引いた差額が事業費となるため、ドアtoドア事業としては低予算での運営が可能となります。

タクシー料金の負担イメージ

対象枠について

 買い物弱者の定義については、国の法令において明確に示されておりません。
    国の研究機関の定義として「自宅から生鮮食料品販売店舗までの直線距離が500m以上」というものがありますが、100mの距離でさえ重い荷物を運ぶのが困難な高齢者はたくさんいます。また、福祉課題が多様化する中で、「買い物に困る理由」というのは様々です。「家族には頼みづらい」「近所に頼める人がいない」「同居する家族が引きこもっている」など、実に様々な理由で買い物に困っている高齢者がいます。これらの方をなるべく多く救えるよう、この事業における対象者は「75歳以上で買い物に困っている市民」という広い定義にしています。
    また、この事業の特徴としてなるべく近い範囲で4人組を成立させた方が事業効率が良いという点があります。利用者が増えれば事業費の総額は増えますが、より近い範囲で利用者の相乗りが可能となることによりタクシー運賃が下がり、利用者一人あたりにかかる費用が減少します。結果的に費用対効果が高くなるというメリットがあります。

実施回数について

 実施回数については、モニター調査の中で、利用者の希望として最も多かった「月に2回」としました。
 「毎週では疲れてしまう」という意見や「娘や孫がたまに連れて行ってくれるから」という意見が多く聞かれました。私たちとしても「既存の絆を壊す事業にはしたくない」という思いと、現在成立している商品の購入方法(宅配など)への影響も考慮し、この実施回数としました。また「月2回」の方が高齢者が楽しみにその日を待ってくれるだろうという感触もありました。
 当然、月2回の買い物では不足してしまう高齢者もいるので、この事業と併せ、宅配サービスを実施している事業者と連携を取り、宅配支援サービスあいのりプラスも実施しています。買い物送迎と宅配を交互に繰り返すことで、買い物事業にありがちな「飽き」を防ごうと考えています。

試験運行の結果について

 事業の最終的な実地検証を行うため、下記の要件でモニターを募集し、試験運行を実施しました。
 
実施期間:平成29年11月~平成30年1月(3か月間)
モニター要件:豊秋地区にお住まいの75歳以上で買い物に困っている方
実施方法:社協職員1名とモニター3名がタクシー1台に乗車し、店舗まで買い物に行く。買い物終了後、モニターに対し、インタビューを行い、事業の課題を検証する。モニター期間中は利用料金無料。
 
 試験運行の実績は下記のとおりです。
 
試験運行回数:7回
モニター数:26名(延べ利用者数42人)
モニター平均年齢:82.6歳
平均買い物購入額:4,286円
平均買い物時間:34分
 
 試験運行における主なインタビュー結果等は以下のとおりです。
 
「500円以上という利用料金についてどう思うか」という質問に対して・・・
 大半の利用者から「タクシーが自宅の玄関先まで送迎してくれて、この料金なら安い」という回答が得られました。
 反面、高齢夫婦からは、「二人で利用すると料金が倍になるため、夫婦二人では利用しづらい」という意見が聞かれました。このため、「同一世帯割引」を導入することにしました。
 
「月に何回この事業を使いたいか」という質問に対して・・・
 私たちは当初「週に1回の事業実施」を検討していたのですが、前述したとおり「月2回」という意見が最多でした。
 詳しくは「実施回数について」をご覧ください。
 
買い物時間について
 予想どおり、「男性が短く、女性が長い」傾向が見られました。早い方は15分くらいで買い物を済ませ、遅い方は50分を超えました。
 早く買い物を終えた方は、店舗内のイスに座り、他の利用者と会話を楽しんでいたことから、「高齢者同士の交流が生まれる」という事業効果はあるのですが、店舗内に座れるスペースがない場合は、何かしらの対策が必要になると感じました。渋川市内には座れるスペースのない店舗も存在するため、今後、対策を検討していきます。
※ 追記:座れる場所がない店舗については、近隣のお店(ミスタードーナツ、リフォームショップなど)で待機させていただくことで調整を図りました。
 
タクシーの待機時間について
 タクシーが利用者宅に到着してから、利用者がタクシーに乗り込むまでの平均時間はおよそ5分でした。この数字は、当初私たちが想定していた時間に近いものでした。
 延べ42人の利用者を送迎したのですが、利用者が不在であったケースは1件でした(ここでのタクシー待機時間は18分)。当然、こういったケースも想定していたのですが、買い物日当日の朝、モニターに対し確認の電話を入れていたため、思ったほど乗車時のトラブルはありませんでした。
 タクシーの待機料金は80秒で90円加算されるため、スムーズな乗車を促すことが事業費の削減に繋がるのですが、高齢者を急かすことは転倒事故等のリスクに繋がるため、「5分は必要経費」と考えることにしました。
 
商品購入金額の調査結果
 私たちが75歳以上の方12名に実施した事前調査では、一週間の平均買い物額3,989円という結果でしたが、試験運行における買い物額(平均4,286円)は、ややこれを上回りました。
 「試験運行が不定期の実施である」という点と「試験運行は利用料金をいただいていない」という点を考慮すると、本格運行時にはより多くの買い物をするのではないか、という感がありました。
 実際、モニターからも「もっと早く買い物日が分かっていれば、もっと買いたい物を事前にメモできた」という意見が多数聞かれました。
 また、本格運行時に利用料金が生じると「せっかくお金を払って来たんだから」という意識も生まれ、より多くの買い物をするのではないか、と感じました。
 平均買い物額については、今後、協賛店舗を募っていくうえで、重要な情報になっていくため、本格運行後も引き続き調査していきます。
※ 追記:事業開始から3か月間の調査結果では、利用者1人あたりの1回買い物平均額は5,747円でした。

よくある質問

 本事業に対する視察依頼やお問い合せを多数いただいております。ここでは特に多く寄せられる質問について掲載しています。

事業費はどのくらいかかっていますか?

 令和元年度の事業費は下表のとおりです。
項目 金額(円) 備考
利用料収入     624,600  
協賛金収入     357,950  
収入合計     981,950  
消耗品費     80,145 買い物カゴ代など
タクシー料金     1,923,850  
支出合計  2,003,995  
収入-支出
▲ 1,022,045
社協負担額
 
 この事業はなるべく近い範囲で4人組を成立させた方が事業効率が良いという特徴があります。利用者が増えれば増えるほど、より近い範囲で利用者の相乗りが可能になり、タクシー運賃が下がります。結果的に利用者一人あたりにかかる費用が減少し、費用対効果が高くなるというメリットがあります。
 
 年間の延べ利用者数が令和元年度の倍(2,000人)まで増えた場合であっても社協負担額は150万円ほどで済む試算となっています。乗用タクシーを使った事業は、数千万円~数億円規模の事業費がかかる事業が多く、これらと比較すると低コストであると言えます。

利用者数はどのくらいですか?

 平成30年度の延べ利用者数は532人でした。この年度は、対象地区を順次広げてきたため、そこまで利用者数は伸びませんでした。
 令和元年度は、3月に新型コロナウイルスの影響から事業を一時的に休止しましたが、延べ1,049人の方にご利用いただきました。

利用者は山間部に多いですか?

 利用者が多いのは意外にも山間地域ではなく市街地でした。
 山間地域に住む高齢者は支援者(近隣住民、親族など)がいるケースが多く、対照的に市街地に住む高齢者は「移動弱者であることに気づかれていない」ケースが多くありました。
 以下、店舗が近い方から聞いたお話です。
 
【Aさん・・・ご自宅はスーパーから直線距離で150m】
「スーパーがこんなに近いから、みんなに『近くていいね』と言われる。そう言われると弱音が吐けなくなるんです。でもお米とか醤油を持って坂は上れないんです。」
 
【Bさん・・・ご自宅はコンビニエンスストアの隣】
「みんなに『コンビニの隣だから困らないね』と言われるけど、コンビニだけじゃ生活できないんです。」

職員体制を教えてください。

本事業の担当職員は2名ですが、他業務との兼務です。
本事業と他業務との従事比率はおおむね下表のとおりです。
項目 従事比率
あいのり 他業務
職員A 0.7 0.3
職員B 0.5 0.5
合計 1.2 0.8
 

お問い合わせ

ご不明な点は、下記の連絡先までお問合せください。

渋川市社会福祉協議会 地域福祉課

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